||| ヒラメの変態/稚仔魚 |||

◇産まれたてのヒラメはふつうの形の魚◇
 孵化仔魚は全長2.4〜2.9mmで体長や卵黄などに樹枝状の黒色素が散在し、筋節数は12〜13+25〜26=37〜39個である。孵化2日目に平均2.8mmとなり、卵黄は著しく吸収され、消化管は太くなり直腸の始部にくびれができる。孵化仔魚は水温では10〜20℃、塩分では1/8海水までは十分に生き残る。4〜5日目に3mm前後となり、眼が黒化し、口が開き、卵黄は油球を残して殆ど吸収される。孵化1週間あまりで3.2mm前後になり、肝臓が出現し、消化管が前部で回転しだす。このころは水温は15℃、塩分は原海水から1/8海水が好適である。
 2〜3週で全長5mm以上となり、前鰓蓋骨や楔耳骨上に小棘があり、胃と腸が分化し、膵臓が完成する。このころの大きな特徴として、孵化後10日前後から後頭部背面に突起が出現し、2週間前後に3本、3週間前後には5本の長い軟条となり、特に、第2〜5条が鶏冠状を呈する。このころから体が高まり、尾鰭や腹鰭が整いだし、歯や鰓耙が出現する。
 孵化25〜30日ごろに全長11mm前後となり、前鰓蓋骨の小棘は15本またはそれより多少とも少なく、胸鰭を除くと各鰭が軟条で支えられるようになり、特に背鰭り条数が定数となる。色素は体の両側で同じように発達するが、変態が始まると体の左右相称性が崩れだし、右眼が深く凹んだ頭の前背方へ移動し、これにともない背鰭前端は右に寄って前進する。また、小指状の幽門垂と胃腺が分化する。
 体長12.1mmの仔魚では、右眼は背正中線上に達し、体はさらに高まる。両顎に犬歯状歯が1列に並び、胸鰭条が形成されだし、体の右側が退色する。体長13.2mmの稚魚では右眼は完全に左側へ移動し、胸鰭条も定数(12本)となり、伸長した背鰭条は退縮する。孵化から変態が完了する日数は飼育実験では24〜50日ある(石田・田中、1976;沖山、1967;安永、1972;南、1982)。
 孵化から右眼が移動しだす変態前までは岸から離れた20m以深の表・中層を浮遊生活する。その水温範囲は12〜20℃、塩分は17〜19‰である。体長は10〜13mmとなった変態中期(右眼が背部に位置する)には岸近い海岸や内湾に移動して底生生活へ転換し、眼の移行が完了する以前に底生生活に入る。底生生活を始めた稚魚は、河口域とくに渦流域に多く、10m以浅で有機物の少ない細砂帯に生息する。
●更新日:2003/01/27,2007/10/08
■参考文献:
落合 明・田中 克「魚類学(下)」,ひらめ,pp.1075-1080(1986)