||| アタリと待ち |||
 「鮃四十鯒二十」と昔からいわれている通り、ヒラメからの魚信(以降「アタリ」)が訪れたら、しばらく待って、ゆっくりと食わせるのがセオリーです。 実際のヒラメ釣りでは、この「ことわざ」通りにやるのではなく、あくまでもこれは、活きエサを使ったヒラメ釣りが、完璧に「向こうアワセ」の釣りなので、その位の気持ちで釣ることが肝心という戒めみたいなものです。
 では、ヒラメのアタリとはどんなものなんでしょうか? 初めての人にとっては、ヒラメがどんな「アタリ」を出すのか想像もつかないことでしょう。 この「アタリ」の雰囲気を文章で表すのは、非常に難しいのですが、できる限りの感性で「擬音」にしましたので、なんとなくご理解して頂けたら光栄です。(苦笑)
 まず、一概にはいえませんが、ヒラメのアタリには、大抵「4つのアタリパターン」があります。
まず最初が「前アタリ」。そして「中アタリ」と「本アタリ」。そして最後に「真アタリ」です。
 「前アタリ」とは、海底に沈めたエサのイワシが、接近するヒラメに驚いて、一生懸命に逃げ惑うアクションを表したものです。 最近流行りの感度抜群の「ヒラメ専用竿」なんかですと、海底のイワシの動きまで竿先に表れて、「キュキュキュン!」とか「ツンツンツン」と穂先が曲がり、案外理解しやすいでしょう。 特にハリスを360度回転しながら逃げ泳ぐ様や、一定方向に「キュン!キュン!」と逃げようとするイワシの強い動きは手に取るようにわかると思います。
 「中アタリ」とは、ヒラメが、逃げていたイワシをくわえた瞬間を指します。 ここでの竿の動きは、「ガツ!」の一言だったり、「グー!」っと引っ張られる様だったり、いろいろです。 決して、ここでアワセたりしないようにしましょう。 (ヒラメ釣りでは、「早アワセ厳禁!」は基本ですよ!) 竿を持っている手にも緊張感があるでしょうが、それを抑制して、ロッドワークで上手に食わせないと、ヒラメは、次の「飲み込み」の動作までに至りません。 ロッドワークは、アタリの出方によりますが、普通は「竿を少し下げる」程度で充分です。
 ヒラメは、くわえたイワシに少しでもテンション(抵抗)が感じられると、さっさと口を大きく開けて離してしまいます。 逆に一度くわえたイワシには、未練がたっぷりありますから、もし「中アタリ」以降にアタリが消えても、もう一度同じタナにトライすれば、再度くわえるチャンス(食い直し)もあるでしょう。 ようは、ヒラメに仕掛けが付いていることを悟られずに、自然に飲ませることが必要なだけです。
 船長によっては、「きっかり1メートルミチイトを送り出せ!」とか「リールのクラッチを切ってミチイトを出せ!」とか「そのままじっと動かさずに待て!」とか、とにかく百人百様です。 つまりこれは、「折角ヒラメが食事を始めたのだから、とにかくそっとしといてやれ!」の意味に共通することです。 自分の判断でやって構いませんが、間違っても竿を上げたりせず、ヒラメの食事の邪魔だけはしないでください。
 「本アタリ」とは、くわえたイワシを警戒せず、口の奥に飲み込んでいく過程を表しています。 ここでの竿の動きは、「ガツ!ガツ!ガツ!」とか「ガクン!ガクン!」など、穂先が上下に激しく揺れ、あきらかにこれまでのアタリとは違います。
 さて、このように竿全体が揺れていますが、どこまで待てば良いのでしょうか? ここからがヒラメ釣り師の本領発揮の場面となります。 冒頭にも記した通り、昔から「平目四十、鯒二十」とかの「ことわざ」がありますが、本当はそんなの殆ど「無視」です。(笑) 
 それは、ヒラメの大きさや活性、今食っているタナの高さによって、アタリからアワセへのスピードが異なるからです。 パターン的には、ベタ底やソゲ+中アタリが小さい場合は、「長い待ち」。 宙層や中型〜大型のヒラメ+中アタリが大きい場合は、「短い待ち」。 ...というのが一般的でしょう。
 ですから、いくら「本アタリ」とはいえ、どこでアワセるかの判断が大変難しいのです。 「よし40数えたから巻いてみよう!」とかの低レベルの次元では、バラシも続発すること請け合いです。確実なのは、 日並みにもよりますが「本アタリ」の後ろには、正真正銘の『真アタリ』があることを身体で感じて覚えてしまう事です。 そうすれば、食わせたら6割位は確実に乗せられることでしょう。 ...でも、プロでも4割はバレますが..(涙)
 それから、ヒラメがイワシを飲み込んだら、まずどうなるか想像してみてください。 針の付いたイワシは、ヒラメの口腔から食道を通過していきますが、ヒラメが「あ〜!旨かった♪」と海底に戻る瞬間や身体を翻して反転する時に「ギュ、ギュ、ギューン!」という竿の絞りが出ます。 つまり、ヒラメの胃袋まで到達したイワシはそのまま胃に取り残され、仕掛けだけが、また食道を駆け戻り、口腔内へと出ようとする訳です。 針は、ご存知の通り、戻せば刺さりやすい形状なので、喉の奥やエラ付近、または口腔内や唇辺りのどこかで必ず引っ掛かります。 しかも、「親孫のタンデム仕掛け」なら、引っ掛かる確率は倍以上です。 それが、竿先に「ズガーン!」と表れ、正に穂先が海面に突き刺さる状態を意味します。 ということで、ここまで待ちに待って「アワセ」を入れるのが正解なのです。
 時々、「根」を攻めている時によく初心者は、「アタリ」なのか「根掛かり」なのか混同する場合があります。 自分で「あれ?おかしいな?」...と思ったらそっと誘い上げてみましょう。 ぜんぜん動かなかったらバッチリ「根掛かり」してますので、他の釣り客に迷惑がかからない内にミチイトを手で引っ張って(くれぐれも怪我しないように!)仕掛けをとっとと抜きましょうね。 よく「大型のヒラメ」と「根掛かり」は、似てるといわれますが、いくら大型でも魚です。 ちゃんと海底から離れる際に「ベリッ!」っていう感触とか、「グラン...グラン...」と横走りする様子が、絶対に竿まで伝わってきますので安心してください。
 ちなみにヒラメは、夜行性の魚なので「アタリ」は、釣り開始直後から周りが完全に明るくなる、せいぜい朝の8時ごろまでがピークといえましょう。 それ以降は、徐々に活性は低下する傾向がありますが、とはいえヒラメは、完全に昼間寝ているわけではありませんので、諦めないで最後まで釣りをしてください。