||| ヒラメの成熟と産卵 |||

◇春の水温上昇とともに成熟し産卵します・・◇
 雌は体長40cm、雄は30cmごろから成熟する。生殖腺は秋から初冬にかけては小さいが、晩冬から早春にかけて急に肥大する。雌では生殖腺指数は11〜2月に1前後であるが、3〜4月に急増して5以上となり、4月末からかなり減少する(図 71・6)。卵巣重量は体長50cmで125g、60cmで220g、70cmで340gである。天然ものでよく熟成したものでは生殖腺指数は20近く、卵巣重量は約440gになる。
 卵巣が中程度に肥大すると卵巣卵の一部の卵群は直径が0.5mmとなり、さらに、肥大した卵巣では0.7〜0.8mmの卵群が出現し、この群から0.9mm前後の透明卵となり排卵される。よく熟した卵巣では、透明卵は卵巣の後部から輪卵管に集められるが、その重量は全卵量の4割を占める(佐藤、1975)。成熟中の1尾の抱卵数は40〜50万粒である。
 精巣は卵巣より小さく、生殖腺指数が5またはそれより小さくても完熟状態になる。完熟した精巣重量は体長40cmで30g以上、50cmで60g以上、60cmで110g以上である。
 産卵期は本州中部以南の各地で2〜5月、日本海沿岸で5〜6月、東北沿岸・陸奥湾・石狩湾で6〜7月である。産卵は岸近くで水深が20〜50m、潮の流れがよく、底質が砂泥・砂礫または岩礁地帯でなされる。
 室内の飼育実験では、水温14.5℃〜21.4℃の3月16日から6月29日までの106日間のうち78日産卵した。雌1尾あたり平均して19.5回産卵したとになるが、1日のうち2回産卵することもあるので、産卵回数はもっと多いことになる。産卵は夜半に70%以上の個体が行い、とくに0〜3時に多い(平本・小林、1979)。水槽内の自然産卵では1尾が1日に平均して100万粒を産み、産卵期間中に平均して1,000〜3,630万粒も産卵する(高橋ほか、1980)。
 ヒラメは春・春夏産卵魚であり、春または春〜夏に産卵する魚種では一般的に春の水温上昇と日長増加の両方が成熟・産卵を促進するといわれている。
図 71・6 若狭湾西部におけるヒラメの生殖腺指数(清野・林、1977) 図 71・6 若狭湾西部におけるヒラメの生殖腺指数(清野・林、1977)
図 71・6 若狭湾西部におけるヒラメの生殖腺指数(清野・林、1977)
●更新日:2003/01/27,2009/05/28
■参考文献:
落合 明・田中 克「魚類学(下)」,ひらめ,pp.1075-1080(1986)