||| 新鮮で旨いヒラメとは |||

 現代のヒラメ漁獲法には、主に底刺し網・底びき網・定置網・釣りなどによって漁獲されています。 この中では、同じ高級魚のヒラメでも底刺し網・底びき網・定置網・釣りの順で値段が変わってくるのが一般的です。 鮮魚市場では、断然「一本釣り」のヒラメが最も高く取り引きをされています。
 さて、どうして値段に差があるかといいますと、「底刺し網のヒラメ」は、網の中で暴れ回り、苦悶しながら死んでいきます。 最高級とされる「一本釣りのヒラメ」は、とても大事に扱われ、暴れず苦悶しないで死んで行きます。 すなわち死に方により値段が異なるのです。
 魚が、暴れ回るということは、旨味成分である「IMP(イノシン酸)」のもとであり、分解するときにに起こるエネルギーがあるからとされています。 魚が暴れれば暴れるほど「ATP(アデノシン三リン酸)」がどんどん消費されていきます。 そうしますと「IMP」ができる量もどんどん少なくなり、その上に鮮度が悪くなる速度も早くなってしまいます。 つまり、美味しい魚を得るには、まず暴れさせないですぐに「殺す」こと大事なのです。 これが、ヒラメの値段に大きな違いができた理由のひとつです。
 ヒラメを美味しく食べたい。 そのためには、釣り上げたヒラメが生きているうちに瞬時に殺すことが最もよいとされています。 その即殺法が「活けじめ」「浜じめ」あるいは「野じめ」という殺し方です。 「活けじめ」とは魚の運動中枢である延髄やエラを切ることです。 延髄は、脳の最後部のところにあって、その後ろに脊髄が連なる辺りにあります。 延髄のある辺りを外観から探す目安は、おおよそ魚の目と鰓蓋(えらぶた)の付け根との中間と思えばよいですが、ヒラメの場合には、頭部が硬いので絞める際には、エラを開けてから脊髄ごと切る方法がよいでしょう。
 また、血抜きの過程で血液を効率よく外部へ排出させるには、ポンプである心臓が止まる前に素早く処理する必要性があります。 そのため、まずはエラから脊髄を切ったら、即エラも切り、そして尾鰭の付け根の部分にも切ってしまいましょう。
 鮮魚市場や上物を扱う魚屋で、御頭(おかしら)付きの丸の魚のこの位置に包丁の刺し傷があって、氷詰めになっているものを見かけますが、これが即殺すなわち「活けじめ」した魚なのです。
 このような「活けじめ」にする魚の多くは、養殖魚や蓄用魚の魚で、高級魚といわれているヒラメ、スズキ、タイ、カレイ、イシダイなどが対象とされています。 つまり、高級魚だからこそ丁寧に扱い、このようにきちん下処理がされることで、鮮度や美味しさを保たれているので高値で取り引きされるのです。
 ちなみに鮮魚市場で出回る「刺し網ヒラメ」でも、死んだ後のヒラメに「活けじめ傷」を細工し、口を開いてワザと針を刺したりして「一本釣り」のヒラメを装い、高値で取引きする悪質な業者もいるらしいのでご注意ください。 結局、針の掛かりが不自然だったり、鰭の部分に血が回っていたり、捌いて肉や血合いを見れば、そのヒラメがどういう死に方をしたかはわかってしまいますので、プロが見なくてもすぐにバレてしまいます。 そういう悪質業者は、いずれ評判や信頼も無くしてしまうことでしょうね。
↑活き絞めをせずにそのまま死んだヒラメの内部
「血抜き処理」をしていないため、血液が体内で凝固し...
身や鰭の隅々まで広がっているのがわかりますか?
これではとても刺身などでは食せませんね。