||| 活きエサのつけ方 |||

 その昔は、コチ(マゴチ)は「活きエサ」。ヒラメは「死にエサ」。と言いました... これは、ある漁師から教えられたものですが、コチはとにかく活きの良い運動率が高い、新鮮なエサでないと食わないデリケートな魚なのに対し、ヒラメは「活きた」エサでも、「死んだ」エサでも食う貪欲な魚なのだそうです。 ですから、ヒラメを釣る際は、荒塩で締めた「塩イワシ」や「塩ハゼ」であったり、冷凍保存してあったものや前日に取り置きしてあったエサを使ったそうです。 漁師によっては、ワザとイワシやハゼなどのエサを叩き殺してから針を刺し、「手釣り」で誘いをかけてヒラメを釣ったとのことです。
 時代は変わり、遊漁船でもヒラメ釣りを楽しめるようになった現在では、活きたエサも流通の発達とともに入手しやすくなり、ヒラメ釣りでは、専ら新鮮な「活きエサ」が一般的となりました。 もちろん死んだエサで誘いをかけるより、活きたエサが自然に誘いをかけた方が、ヒラメの食いもいいことは想像がつくことでしょう。
 それでは、まず最初にヒラメ釣りの「エサ」についてご説明します。 ここではヒラメ釣りで最も一般的なエサとなる活きた「マイワシ」をメインにいたしました。 尚、その他のエサについては、わかりやすいように「ヒラメ釣りの代表的なエサ」のページがありますのでぜひご参照ください。
【関連ページ→「御法度(禁止手)と裏ワザ」】
■活きの良いマイワシを使う
マイワシは、活きのよい元気なものを使いましょう。 眼はしっかりと黒く、力強く泳ぐマイワシが最高です。

←のように掬い揚げたときに各鰭(ヒレ)がピンと張っているものは、活きがよく元気なマイワシの証拠。 
■桶には、せいぜい2尾〜4尾
とにかく弱いマイワシ。 水温の変化や直射日光に当たるだけで徐々に弱っていきます。 釣り座には、たいていバケツなど桶が用意されている場合が多いです。 ここに入れるマイワシは、夏ビラメの暑い時期で、せいぜい2尾。 真冬での寒ビラメシーズンでも3、4尾を限度としましょう。 また、船宿によっては、マイワシが不足しているとサビキでアジ釣りしてからポイントに行く場合もあります。 それ程、活き餌の確保が難しく、大事なことなんです。 現在、活きたマイワシは「高級魚」です。 一尾200円前後は確実です。(平成19年11月現在)
■マイワシは丁寧に扱う
マイワシは、名前の通り非常に弱い魚です。 素手で長く持つと人間の体温で火傷をし、鱗(ウロコ)が剥がれ、一気に体力が消耗します。 またストレスにも極端に弱く、丁寧に扱うことが必要です。 そのため、できる限りマイワシをすくう際には、「掬い網」を使うことをお勧めします。 マイワシは、弱ってくると全体に赤み(内出血)を帯び、眼球は充血します。
■暴れるマイワシの攻略
マイワシは手に持つととたんに大暴れを始めます。 これは逃げたい一心の動物的本能ですが、比較的どの生物も「眼」を覆われると大人しくなるものです。 マイワシも握る角度を工夫すれば、ある程度の暴れは抑制できるでしょう。 「エラブタ」を軽く押さえるように持つのも効果的です。 また、桶の中で手をできる限り水温と同じ温度まで下げてから、水中で針を刺すのもよい方法です。
■手に持ったら素早く鈎を刺す
マイワシの鈎刺しは、スピードが重視です。 鱗剥離や火傷防止のため、まず手を濡らし、マイワシを掴んでから鈎刺し、投入までの一連の動作をせいぜい5秒以内に完了できるように練習しましょう。 これを早くすることで、マイワシを弱らせず、大切な「鱗」もより多く残すことができます。 「鱗」は、海底で「コマセ効果」があるものと覚えましょう。
■「親鈎」の口がけ@
ここからは、鈎の掛け方です。 写真のマイワシは、撮影しやすいように死んだものを使用しました。 現在のヒラメ釣りでは、殆どが「親鈎」と「孫鈎」のタンデム仕掛けです。 「親鈎」は、口または鼻に掛けるようにします。 左の写真は、最も簡単な「口がけ」です。 必ず「親鈎」を口の中から上顎(アゴ)に抜くようにします。
■「親鈎」の口がけA
口がけでは、「親鈎」をマイワシの口の上顎にある真ん中の白く最も硬い場所を狙って打ち、確実に鈎のカエシを上顎へ抜きます。 ここを外すと投入後にマイワシが親鈎から外れやすくなります。
■「親鈎」の鼻がけ
これはマイワシの鼻の穴に鈎を刺す「鼻がけ(横がけ)」です。 「口がけ」よりもマイワシの負担が少なく、一番長生きします。 但し、鼻の穴は、ハリスと鈎の動きによって、段々と広がってきますので、外れやすいのと、鈎がクルっと回りこんでマイワシの目に刺さりやすいのも欠点です。 「@店主」は、この「鼻がけ(横がけ)」の「親鈎」一本針を多用しています。
■「親鈎」の眼がけ
これはマイワシの眼の内側にある透明な部分に鈎を刺す「眼がけ」です。 「鼻がけ」に比べて一段と安定し、青物対策(ひったくり)などに有効です。 こちらの場合も、鈎が不安定な状態になりやすいので、必ずストッパーを付けるようにしましょう。
◇入荷待ち◇ ■親鈎はマイワシのどこにかけるのがベストか?
「親鈎」の最後の刺し方で、下顎から上顎に抜く「通しがけ」という方法があります。 これは、活きたマイワシでは使わないでください。 魚類は、口から海水を吸い、エラを介して酸素を体内に取り込みます。 「通しがけ」にして口を完全に塞いでしまうと、マイワシはあっというまに窒息死してしまいます。 但し、活きたマイワシがなくて「死にエサ」でやる場合は、この「通しがけ」でも問題ありません。
【関連ページ→「関東カタクチイワシ餌対策」】
【参考資料】
海から回収した活きエサを有効利用する方法と親鈎の刺し直しの順番
順番 掛ける位置 マイワシの元気度
@ 鼻がけ(横がけ) ★★★★
A 眼がけ ★★★
B 口がけ ★★
C 通しがけ
この順番で刺し直しが有効です。
■「孫鈎」の背がけ
「孫鈎」は、どこに打つか迷いますよね。船宿の船長によっては、下から見上げているヒラメの死角になるから「背」がいいとか、ヒラメは下から噛み付いてくるから「腹」がいいとかいろいろです。 基本的には、「孫鈎」は、「親鈎」に対する『保険』みたいなものなので、どちらでも構いません。(笑) でも打つのなら弱りにくい「背がけ」の方が無難でしょう。
■「孫鈎」の腹がけ
「孫鈎」を「腹がけ」する場合は、できる限り「肛門」辺りか、下鰭辺りがよいでしょう。 それ以外の腹回りに打つと、マイワシが一気に弱ります。 ちなみに「親鈎」と「孫鈎」の間隔は、海の中でイワシが元気よく泳げるように必ず余裕をもたせてください。 概ね「指4本」くらいの間隔があればベストです。 また、「孫鈎」の向きは「背がけ」「腹がけ」ともに必ずイワシの頭向きに鈎が向くように打ちます。 「親鈎」の向きと同じ方向です。
■「孫鈎」の横がけ
「孫鈎」の「横がけ」です。 腹でもなく背でもない胴体の横に鈎を打ちます。 しかし、その効果は、あまり関係ありません。
■「孫鈎」のフリー
上にも記しましたが「孫鈎」を打つとマイワシは弱ります。 理想は「親鈎」だけの一本鈎ですが、どうしても心配な場合は、「孫鈎」付きのタンデムでも構いません。 その際は、「孫鈎」をマイワシに刺さず、ぶらぶらとフリーにしておくのも一つの方法です。
【お願い】
 「孫鈎」で俗に言う「トリプルフック(トレブルフック)」の使用は、スレ掛かりなどを誘発し、ヒラメに大きなダメージを与え、小型の「ソゲ」などはリリースが難しくなるので、ベテランの域に達したら使わないように心掛けましょう。
 「鮃屋」では、自然環境保護や資源枯渇防止に反する「孫鈎」の「トリプルフック(トレブルフック)」の使用を全面的に禁止しています。貴重で大切な海洋資源のヒラメの乱獲をせず、次の世代にも残して行きましょう!みなさまもぜひご理解賜りご協力ください。
⇒ November 04, 2007 release